11 オンライン授業の可能性と課題

ICT教育

学校の休校期間が開ける前に、学校で何度かオンライン授業を行いました。
オンライン授業の可能性と課題について少し書いてみたいと思います。
あくまでも高校教師の視点です。
(事例発表のための思考整理でもあります。)
この件に関しては、定期的に内容を更新する可能性は大です。(今後も検証が必要)
※2020.6.19に追記しました。(後半の可能性・課題・まとめ)

実施概要

システム

今回はzoomを使用。
会議システムのアプリは他にもGoogle MeetMicrosoft Teamsなどがあります。
友達同士なら、LINEやiPhoneのFaceTimeなんかでも十分ですね。

実施時期

5月中旬
接続テスト1回、授業3回 朝9:00〜9:50(通常授業と同じ50分間)

目的

休校期間中の学習の補習と、学校再開に向けての生活習慣の確立。

対象

2年生の希望者。

実施内容

数学Ⅱ
春休み中に動画配信した内容の復習の補習。

事前告知

普段学校で使用している連絡網アプリで告知し、補習の概要、zoomミーティングルームのURL、ID、パスワードを配布。
またアプリのダウンロード方法、接続方法の説明(pdf)を添付。

実施方法

1.各回前日までに、連絡網アプリを使い予習課題プリント(pdf)の配布。
2.予習を前提に補習を行う。
3.授業はパワーポイントを画面共有しながら、説明を行う。
4.予習してきた課題,授業中の演習問題はブレイクアウトセッションを使い,
  3-4人のグループに分かれ,答え合わせを行う。
5.解説はパワーポイントの画面に、タッチペンで書きながら進める。
6.最後に応用問題を出題し、次回までの課題とする。
7.別途質問がある生徒は残って個別指導を行う。(書画カメラ・手書き用紙使用)8.授業後にgoogle driveのURLを連絡し、授業資料(pdf)を配信。
9.授業動画を編集し、youtubeの限定公開で配信。

準備機材

・タブレット型PC(タッチパネル有・画面着脱可)
・確認用PC(画面にどのように写っているかを確認するため)
・Wi-Fiルータ
・書画カメラ
・タッチペン(タッチペンのみ自前で購入)

実施上のポイント

先々のことを考え、学校で誰しもが使える機材を使用した。
最初、書画カメラで黒板を写し、板書しながら授業を進める予定でいたが、ブレイクアウトセッション(グループワーク)のコントロールを考えると,あまりPCから離れない方が落ち着いて授業を行えることがわかった。
そのためパワポで授業資料を作成し、授業者がタッチパネルで画面に書き込んだ。
また,グループワークの補助として、2学年を担当する教員2名も参加し3名体制で行なった。

メリットとデメリット

普通に考えれば、もうこのコロナ禍のようなことは、繰り返しあるわけではありません。しかし、今後オンラインで授業をすることの意義もあるはずです。
そのことを考えたときに、通常の授業と比べてメリットやデメリットがどの程度あるか考えることにしました。
普通の授業をオンラインに置き換えたらどうなるかという観点で書いていきます。

メリット

授業者側のメリット

・教員が学校にいなくてもどこでも配信できる。
・一度に大勢の人数に対して授業ができる。
(部屋のキャパを気にする必要がない。)
・画面を共有できるので、授業スライドなどを画面に映し出すことができる。
・パワポさえ準備すれば、座って授業ができる。
 (普段、平均して1日3時間超は授業で立っていますが、結構疲れます。マラソンを走り切れる時間。)
・ブレイクアウトセッションを使用し、グループワークが可能。

受ける側のメリット

・スマホさえあれば、どこでも受講可能。
・授業プリント、授業動画を後でシェアすれば、復習に使える。
・学校に行かなくても授業が受けられるため、ログインして授業さえ受ければ、
 学校に通えないという意味での不登校が解消する。
・人と直接コミュニケーションをとる必要がない。

デメリット

授業者側のデメリット

・授業スライドの準備が大変。(毎日は無理だな)
・一人でブレイクアウトセッション(グループワーク)の処理と授業の進行は難しい。
・画面越しだけでは、生徒が理解できているかの確認が難しい。
・授業が講義的(一方通行)になりがち。
・ログインできない生徒やWi-Fi環境のない生徒への対応。

生徒側のデメリット

・主体的に参加できないと、形だけ参加したことになり、何も身につかない。
(これは、普段の授業も同じですが、授業者側がそのことに気がつくことが難しくなります。)
・見ず知らずの人とグループワークになったときコミュニケーションが難しい。
・回答する時など、隣の友達に答えをこそっと確認することができない。
(実はこれはかなりのストレス)
・授業動画や授業資料が共有されないと、授業についていけない場合、やりっぱなしになる。(これは普段の授業でも同じことが言えますが。)
・事後に行った生徒の感想を読むと、「顔を晒すのが嫌だった」「知らない人とグループワークするのが辛い」という意見もかなりありました。
・喋るタイミングが難しい。

思いもしなかったメリット

・Youtube用に授業動画を編集してみて、恥ずかしながら、初めて自分の授業を見ました。それを見て、私は口癖や進行の仕方など、見直す機会になりました。
(ちなみに編集はiMoveで行いました。)
・今回数学科以外の先生が、数人授業を参観してくれました。(他の学校の先生も含む)遠く離れていても、授業に参観できることは大きなメリットであるように感じます。

オンライン授業の可能性

コロナ禍を通して見えてきたオンライン授業の可能性について、思いつくままに書いてみたいと思います。

登校できない生徒への学習保証

健康上の理由などで、登校できない生徒へ授業を提供できる。システムを構築するにはまだ時間がかかるが、不可能ではない。

授業の棲み分け

顔を合わせて行わないとできない授業は、これまでどおり学校で行うことが重要です。しかし、講義形式の授業については、わざわざ同じ場所に集まってやる必要はありません。すなわち休日や長期休業の補習などは、オンラインで十分可能。人数に制限を設けずにできることを考えると、教師側も何度も授業をする必要がなくなるのではないでしょうか。

外部の会議のオンライン化

〇〇指導主任の定例の会議などはわざわざ集まることなく、オンラインで十分。
これまで、会議のために自習や授業交換で対応していたが、移動時間がなくなれば、かなり楽になると思います。
※これは必ずやってほしいです。

学習コンテンツの選択

これまで学習は学校か塾でやるものという固定観念がありましたが、オンライン上には優れた学習コンテンツが多くあることがわかってきました。YouTubeでも十分すぎるほどに学ぶことができます。
今後、これだけ溢れているコンテンツの中で、(教師が)何を選んで提供するのか、(子どもたちが)何を選んで学習していくか、という力も重要になると思います。

オンライン授業の課題

ITインフラの整備

まだまだ各家庭にPCやタブレット端末があるとは言い難い状況です。
とりあえずWi-Fi環境とタブレット端末は各家庭に整備したいですね。
学校で一人一台揃えることも大事ですが、家庭での購入は今後必須であると考えます。学校や市町村で購入の支援を行えると良いのではないでしょうか。

教師側の心理的な壁

あくまでもこれは私個人の考えですが、技術的な点だけでなく、「直接顔を合わせて授業しないと授業にならない」という点で、オンライン授業に対して抵抗がある先生は多いのではないでしょうか。
しかし、今後技術発展が進んでいく中で、学び方の一つとして、受け入れていくことは大事ですね。

授業準備が大変

これが一番の課題ですね。
パワポなどを作ろうと思うと膨大な時間がかかります。
特に数学などの数式を組み込むのはかなり時間がかかります。

時間がなければ黒板に板書して映し出せば良いとは思いますが、立って喋りながら、受講者の様子を画面で見ながら、コントロールするのはなかなか困難ですね。
対処としては、TTをつけて複数人で授業を行うことでしょうか。パワポの準備も順番で行ったり、授業者とコントロールする人は分けるなどでしょうか。

現時点での私のまとめ

学校に通学できない状況での代替えの手段としては、十分有効なように思いました。
しかし、通常授業の代替えと考えたときには、課題は多いです。
どうしても一方通行になり、学び合いが難しいからです。
現時点では、オンラインもうまく活用しながら、「通常の学校での学びの質を高めていくために利用する」ということなのかなと思います。

しかしながら、これからの教育のあり方を考えていくと、授業に限らずオンラインでの学習の可能性は感じています。
コロナ禍がおさまって、オンラインでの学びが全くなかったものになってしまわぬように、従来の学習に組み込んでいくことが重要となります。

ただしどうであれ、やはり大事なのは、主体的に学ぶ意思があるかどうかですね。
結局のところ、これがなければオンライン云々は関係なく、どうにもなりません。
私たち(教師側)としてできることは、主体的に学びたくなるような環境設定をしていくことですね。(主体的に学ばないことを子どもたちのせいばかりにしない。)

ちなみに現在私は大学院での講義やゼミをほぼすべてオンラインで行っています。
ではこの2ヶ月半どうだったかというと、非常に勉強させてもらえているし、主体的に学べています。

今後も様々な形でオンライン授業は行われていくと思います。
それが子供たちの学びにとって、より良いものになることを切に願います。

現時点(2020.6.19)での考えは以上になります。しかし今後も随時追記・変更していきたいと思います。どこが書き変わったかわかりづらくてすみません。

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コメント

  1. […] さて先日、オンライン授業の可能性と課題について書きました。今日は第2段。オンライン授業は先生たちにとってどうだったのでしょうか。 […]

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